ゆめ通信 掲載記事紹介

ゆめ通信(2020年11月発行)に、Topigs Norsvin記事が掲載されましたので、以下に掲載記事を紹介いたします。

Topigs Norsvinの経済合理性

 弊社(日の出物産株式会社)は、2010年より、Topigs Norsvin社の国内総代理店として、種豚の輸入販売業務を開始し、今年で10年目を迎えます。そこで今回は、日々ヨーロッパで育種改良されている、Topigs Norsvin社 製品の最新技術情報を、皆様と共有させていただけましたらと思います。

 ご存知の会員の方も多いとは思いますが、Topigs Norsvinは、もとは農場主であったTopigs社(オランダ)とNorsvin社(ノルウェー)が、2014年に合併してできた会社で、“遺伝子を売る”会社です。世界中から集めた、4,500万頭の豚の遺伝子情報を一ヶ所に集約し、日々情報を更新していくことで、均衡・調和(バランス)の取れた豚を育種・改良しています。Topigs Norsvinの育種において、最大のポイントが「バランスブリーディング」という言葉に集約されます。よく、どこか一点に突出した長所があるが、その反面短所もある、ということが、しばしば見受けられます。しかしバランスブリーディングでは、そういった凸凹がなく、バランスが取れていることを重要視しています。
 ではそのバランスブリーディングとは、一体どのようなものなのでしょうか。ひと言で表すと、【最小限のコスト(労力・費用)で、最大限の成果】を出す、という育種です。以下に、具体的な内容を記載していきます。


■最小限のコスト(労力・費用)

①母豚性能
 Topigs Norsvinの母豚は保育能力が高く、人の手がかからない点が大きな特長です。良い母豚とは、効率的に母乳を生産するだけではなく、人に対しても子豚に対しても穏やかな性格をしています。性格の穏やかな母豚の場合、子豚の圧死は少なく、初乳摂取に十分な時間を与え、乳頭まで誘導することにも長けています。初乳摂取時間の比較(分娩介助なし)では、哺育能力レベル価の高い母豚の子豚が、初乳を飲むまでに約45分を要した一方、哺育能力レベル価の低い母豚の子豚の場合は、約90分もかかりました。早く十分な初乳を摂取できた子豚は、免疫を享受し、その後 理想的な成長スタートを切ることができるため、これらの子豚は生存率も優れ、肥育期における成長にも差が出てきます。良い母豚の保育能力には、具体的に母豚の声や子豚への接し方、横たわり方、乳器の形状などが関連しており、このような母豚の性格は遺伝していくため、Topigs Norsvinでは保育能力レベル価の高い母豚の、更なる改良を重ねています

~母豚性能:哺育能力と子豚の初乳摂取~
~母豚の生産寿命~

②母豚の生産寿命
 母豚の生産寿命は脚質、繁殖能力、母体コンディションなど、多くの要因から影響を受けるため、それらの要因は、育種目標に組込まれています。
 Topigs Norsvinでは、母豚の外貌にも注意を払い、各特性を育種価値として、スコアリングしています。また生産寿命に関する問題として、母豚が生産寿命を全うする前に淘汰されてしまう点も挙げられます。これはアニマルウエルフェアはもちろん、経済的観点からも非常に望ましくありません。そのため、関連する特性を育種目標に設定し、その成果は実際の農場において現れ、その安定的な生産寿命と事故率の低さで高い評価を得ています。

③抗病性
 Topigs Norsvinの豚は、病気に強く、治療に要する労力や投薬費用の削減にも貢献しています。また臨床試験によって、PRRSの自然耐性に関連した、遺伝子を発見しました。PRRSは全てのステージにおいて影響を及ぼす、コスト的に最も頭を悩まされる疾病ですが、一部の個体や血統に、他よりもPRRSに対する耐性を持つ豚が存在することがわかりました。そのため、その遺伝子を持つ豚を、ブリーディングプログラムに組み入れて育種を行った結果、PRRS耐性が強く、暴露後でも良好な増体を示すことができるようになり、通常の強健性のみならず、疾病に対する自然体性を高めるブリーディングに成功しました。

~PRRSに対する自然耐性~

■最大限の成果

①子豚の生時体重と均一性
 子豚の生時体重は1kgを超えたあたりから、生存率が向上するため、Topigs Norsvinでは、年間約75万頭の子豚の体重を測定し、育種に活かしています。
 また生時体重と共に重要なのが、生まれた子豚の均一性です。凸凹のないバランスブリーディングでは、総産子数を増やしながらも、生時体重は維持することを念頭に置いています。

②強健性
 強健性のある豚とは、飼料効率性が優れていて、健康状態が良好というだけではありません。社交性が良好ということも、強健性の一つです。豚がお互いに害を及ぼしたり、望ましくない行動、特に尻尾を噛むなどの行動に関しては、感染につながる可能性のある外傷を引き起こすため、このようなストレスの原因となる豚は、同群の他の豚の成長に、悪影響を及ぼします。
 Topigs Norsvinでは、そのような豚を特定するため、ビデオカメラを使用しています。このカメラが人間の目に置き換わり、豚の動作監視や行動解釈を行うことで、群飼における喧嘩を認識することも可能になります。豚がグループ単位でよりよく行動し、群の中のすべての豚がよく成長することで、全体的な最終成績に加え、アニマルウエルフェアのレベルも向上します。

~ビデオカメラ~
~雄臭対策~

③雄臭の低減
 雄豚の獣臭は多くの方法で減らすことが可能ですが、育種による方法もあります。すべての種雄豚と雌系統での育種により、母豚の繁殖特性を失うことなく、雄臭の遺伝性を減らすことに成功し、2006年~2017年までの間に、雄臭は35%から57%に減少しました。これはTopigs Norsvinの止め雄 後代が雄臭を引き起こすのは、2%~3.5%のみということを意味しています。
 また5年以上前に、雄臭に対する遺伝率が非常に低い止め雄である「Nador雄」が導入されました。Nador雄は、他の雄と比較して、雄臭の発現可能性が40%低い雄豚です。このような育種を続け、今後さらに、雄臭を減らすための主要な措置が講じられていきます。

④CTスキャン
 CTスキャンテクノロジーは、生きた豚の内部を調べる技術で、多くの可能性が開かれます。CTスキャンには、解剖よりも倫理的な利点があり、動物の遺伝的特徴を知るために子孫を調べる必要がないため、育種価値を今までよりも、遥かに迅速に測定することが可能となります。CTスキャナーでは、例えば乳頭数、ひいては母豚が自分で育てることができる子豚の数に関連してくる、“椎骨の数”を容易に特定することができ、さらに骨軟骨症の診断や、臓器のサイズ・形態も測定できるため、生産寿命と疾病耐性の特性に関する情報も得ることが可能です。

~CTスキャン~

■終わりに

 ここまで、Topigs Norsvinが育種改良の骨子としている重要な改良項目また改良技術についてお話をさせて頂きました。私たちの使命は、国産豚肉の生産を通して、日本の食料自給率を向上させることだと思います。平時はさほど強く意識されることは少ないですが、食料自給率の向上は、日本国民を守っていくことに相当することだと思います。少子高齢化が進む日本社会において、食の安全はますます重要化し、労働力(人材)の確保も、今後ますます難しくなっていくことが予想されます。皆様が最小限の労働コストで、安心・安全な国産豚肉を最大限に生産していくため、【最小限のコストで、最大限の成果】を出せるTopigs Norsvin種豚を安定的に供給できるよう、弊社として一層努力していきます。

Topigs Norsvin Japan-日の出物産株式会社

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